美術の旅人

よねひと

屏風の世界  6月12日(土)~7月25日(日) 出光美術館 

よねひと

美術館の絵は全体のコンポジションを把握できる位置、つまり真っ正面から見るのがベストポジションであるとの近代的鑑賞法から抜けられない。この展覧会でも、はじめはそうであったが、しばらく眺めていてからどこか違うと気付いて、右から左へと歩みつつ、ときどき立ち止まり、目線を前や後ろに移動させながら見た。すると驚くべき変容。絵はストーリー性を持ち始め、いきいきと動きをともなったものとして生起し再構成されていく。最初に現れる登場人物の視線の先にあるものは、例えば富士であったり、押し寄せる波だったりして、はじめは片鱗しか見えていなかったものが、歩みとともに、巨大なもの、恐るべきもの、妖異なものへと変化する。

この感じはどこかで、と思えばそう漫画の世界。漫画のコマの展開に与えた映画の影響はよく言われるが、日本では屏風絵のDNAがもともとベースにあるのではなかろうか。狩野元信の西湖図屏風は、以後の画家にとって教科書的な作品で、右隻、左隻に囲まれるような一所に座って全体を見渡せばまさしく3Dの世界にすっぽりつつまれるしくみになっている。

しかし、元来、日本人はこうした総合的な世界像を描きだすのは得意ではない。それよりは人物にズームしてキャラクター化したり、切り取られたシーンを連続させてストーリーをつくる方が得手のようだ。大画面のまとまり中で様々な場面を見せるために役立っていた金雲は、漫画という個人の娯楽ツールが生まれる中で「枠」や「柱」へと変わっていったのだろう。

帰宅してから展覧会のカタログを見たが、この展示会を企画した学芸員の意図も屏風「絵」ではなく「屏風」の世界、つまり屏風というジグザグに折れたデバイスがいかに絵のつくりに影響を与えていったかという点を見せるところにあったようである。

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